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「呪いの道具」


ある夜のことだ。
Aは道端で何かを売っている男に出会った。

「そこのお方。どうです、ちょっと見ていきませんか」

並べられたものはよくある呪いの道具らしく、いかにも怪しげ。
しかしAは足を止め、しげしげと眺める。

実は先日、エヌ氏の同棲している恋人が何者かにレイプされたのだ。
乱れた服装でよろよろと帰ってきた彼女を問いただすと、何と真昼間から誰かに犯されたと知った。
彼女は相手の顔を見ている筈だったが、特徴の一つも言おうとはしなかった。
よほどショックだったのだろうと考え、彼女が拒否する為なかなか警察にも行けず。

そんな時にこの物売りと出会ったのだ。
しかも商品は呪いの道具。
警察に言えないのなら、いっそ自分が呪い殺してしまえ。
Aは呪いを信じる人でも簡単に殺意を抱く人でもなかったが、事が事だった。
すっかり怒り狂っているAに男は言う。

「この藁人形なんてどうでしょう?相手の髪の毛を入れて釘を打つだけの簡単仕様。 更には髪の毛が入手できない場合、釘だけでも呪うことは可能です。
……ただ、それだと精々が相手の身内までにしか呪いは届きませんが」

詳しく聞くと、血の繋がりの強い親か子に効果が出るという。
本人じゃなくとも、それならそれで、復讐にはなる。
家族は関係ないという思考はなかった。
Aはそれを購入し、すぐに帰宅する。
話を聞いた彼女は途端に焦って止めようとしたが、Aは聞く耳を持たずに釘を打ちつけた。

すぐに心臓に激痛が走った。
朦朧とする意識の中、自分の両親に彼女を会わせた時の父親の顔が思い浮かんだ。




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