
〜第61夜〜
「妖怪百物語」
自分の友人たちと「妖怪百物語をやろう」ということになった。
怖い話100本を、1本やるごとにローソクを消してくというもの。
100の話が終わって、100本ロウソクを消すと、幽霊が現れるっていうものを
期待しながら、怖がりながら始めた。
当日はなんと25人集まり、妖怪百物語を始めることにした。
しかし、100本終わってロウソク消しても何も起らなかった。
帰り道
「何も起らなかったな。やっぱりウソだったんだよ」
などと話しながら帰っていたところ、
「最後、順番回ってこなかったな」
って言う奴がいるの。
えっ?
25人いるんだから、順番回ってこないわけない。
それで、録ってたテープを再生してみると、
1人だけ持ち主のいない話があって、よく聞いてみたら、
「俺、おととい死んじゃってさ…」って話してた…。
〜第62夜〜
「ありふれた情景」
ありふれた情景。これも一種の幸せなのかもしれない。
弟と母さんと3人の夕食。
会話もほとんど無いんだけど、ちゃぶ台を囲んで黙々と
ご飯を食べるのも、平和な証拠なんだろう。
父は物心ついた頃には家には居なかった。
なぜ父は居ないのかなんて母さんに聞いたこともなかった。
必要だと思ったこと無かったし。
母さんは過労気味で最近病気がち。
よく寝込んだりするので心配。
物忘れもも激しいし。
でも一生懸命俺や弟の面倒を見てくれる。
早く楽にしてあげたいんだどね。
弟は来年、医大を受験するそうだ。
医大を卒業して、俺が患っている病気を治す医者になるんだって
言ってくれた。
「俺の事はいいから、自分が本当にやりたい事をやれよ」と言うんだが、聞く耳もたない。
つうか聞かない。
それでも、自分の自慢の弟なわけだが…
最近気づいたんだけど、ご飯の時は俺だけおかずが無いんだよ。
母さん、大丈夫かな。
〜第63夜〜
「公園のトイレで」
夜居酒屋でバイトしてた頃、残業してたらいつもの電車に間に合わなくて、
途中の寂れた駅までしか帰れなかった時があった。
その日は給料日前日で全然金なくて始発出るまで公園で寝てたんだけど、
寒さで腹壊しちゃってトイレに行ったの。
少しして隣の個室に人が来たんだけど何か電話しながら入って来たみたいで
話が聴こえた。
外からは車の音とかするんだけど、トイレの中はかなり静かだから
相手側の声も微妙に聴こえた。
「ん?うん、分かってるって。あはは!あ、ごめんごめん。何?」
『・・なった・・い つか・・』
「あぁ、そーだなー。大丈夫だって。気にすんなよ。え?おう。
あははっ!やだよ。なんでだよ!ふふ。うん。そーなの?」
『たしか・・かけ・・し・・』
「そうだっけ?おう・・あー、そうかもしんね わり!ちょっと待ってて」
トイレから出ようとした時、隣から。
かさっ、しゅっしゅっ。と言う音と同時に、はっきり相手側の声が聴き取れた。
『ったでんわばんごうは、げんざい、つかわれておりません。
ばんごうをおたしかめのうえ、おかけなおしください。おかけになったでんわば…』
「もしもし?わり。タバコ。で、何だって?ああ、そりゃおま」
急いで駅まで走って逃げた。
〜第64夜〜
「誤作動」
僕の家は母子家庭で、母親が仕事から帰って来るのはいつも深夜だった。
その間、僕は受験勉強をしたりして過ごす。
24:00頃になると、母親は仕事が終わり、僕の携帯に電話してくる。
「今から帰る、何かコンビニで買ってくる?」そんな内容。
その日は「別にないよ。」と電話を切る。
数分後、生活用品が切れてたのを思い出し、着信履歴からかけ直した。
3〜4コールしても出ず、「運転中か・・・しょうがないな・・・」
と思い、諦めようとしたその時、通話モードになった。
僕:「あ、もしもし。お母さん?」
母:「スゥー・・・スゥー・・・(鼻息の音)」
僕:「おーい、聞こえてる?」
母:「スゥー・・・スゥー・・・」
車の走行音や、運転をしているような環境音は一切なし。
鼻息の音だけが受話器の向こうから聞こえてくる。
別に恐ろしくはないが、何か不可思議な現象に困惑し僕は電話を切った。
間違ってかけてしまったか?
いや、履歴から電話したし発信履歴も母になっている。
じゃあ、母が何かの拍子で通話ボタンを押したのか?
鼻息が聞こえるほどの口元で?それに走行音やら雑音がするだろうし。
回線の混線か…?
と、当時の僕が出した答えは、腑に落ちないながらも混線説。
一応答えが出たことで冷静になり、もう一度電話してみる。履歴からじゃなく。
出ない。やっぱり運転中なのか。諦めて机に向かう。参考書に目を通す。
と、もう1つの可能性を思いつき、心配性の僕の胸の鼓動が早くなる。
もしや、事故にあったとか。
僕は混乱していた。警察か救急車か、それとも原付で探しに行くか?
僕は混乱していた。心配性な上に混乱していて、頭も胃もキリキリマイ。
そうこうしていると、母親の車の音が聞こえてきた。
「なんだ・・・よかった・・・そりゃそうだよな・・・」ほっとする。
車が車庫に入り、ドアが開き閉まる音。「バタンッ、バタンッ」、と2回。
僕はちょっと不思議に思った。
いつも母が車から降りる時のドアの音は1回のはず。
それに今日は買い物もしてないはずだし、荷物もないはず。
不思議になりながらも、安堵していた僕は玄関まで迎えに行った。
「ただいま」母が帰ってきた。荷物はいつものバック一個。
「ん」反抗期らしく僕は無愛想に返す。
居間に行き、電話したことを告げると、運転中で気付かなかった、と返されあの不思議な電話の事を
話そうとしたら、母が先に話しだした。
どうやら怖い体験をしたようだ。
「S川知っとるやろ?ほら、こないだ4人殺された事件のやつ」
(当時、隣町で一家四人惨殺事件があり、死体は川に沈められていた)
「帰りにS川沿い通ってたんよ」
「そんで丁度死体が上がったあたりに差し掛かった時にね」
「プリウスがね、助手席のシートベルトをお閉めくださいって言うんよ」
「誰も乗ってないのにね。あんたこういうの好きやろ?」
僕はゾっとした。
僕の中で今までの不可解な現象が繋がったように感じ、ゾっとした。
今思うと、プリウスのセンサーの誤作動であろう事だがその日の僕には、
なにか異様な恐怖が込み上げてきて勉強どころじゃなかった。
僕は恐る恐る母に尋ねた。
僕:「今日さ、車から降りる時さ、ドアの開け閉め2回したよね。なんで?」
母:「ん?1回しかしとらんよ」
〜第65夜〜
「おもしろいビデオ」
「面白いビデオがあるから見に来いよ」
友人Aに誘われたのだが、その日は都合がつかなかったので断った。
数日後
「面白いビデオがあるから見に来いよ」
と友人Bに誘われた。
その日は何も予定が無かったので見に行った。
友人B宅につくと
「よかった〜、淋しくてさ。ま、あがれよ」
「この前Aにも『面白いビデオがあるから見に来いよ』って誘われたんだよ。その時は行けなかったんだよな」
「知ってるよ」
「そうなの?あ、それがこのビデオ?借りてきたの?」
「ま、見ようぜ」
ビデオが始まった。
どこかの誰もいない部屋が映ってる。見覚えがあるな。
これはAの部屋だ。
…しばらくは何も起こらない。
怪訝に思ってBに話しかけようとするといつの間にかいない…
トイレか?
俺はまた画面を見つめる。
「おーいA。ビデオ終わったぞ」
Bの声だ。返事はない。
画面の正面にある押し入れの襖が少しずつ開いていくのがわかった。
はは〜ん、押し入れの中からいきなり出てきて脅かそうってパターンか、
と思いながら見てるとそうでもない。
相変わらずゆっくりと襖が開いていく。
中から人が出てきた。
あれ?Aじゃん。Aが近づく。カメラの前を通り過ぎた。
「く…来るな…やめろ…やめ…て…くれ…」
Bの声だ。
Aが戻ってきた。何か引きずってる。Bだ。
Bは生気のない表情のまま足を持ったAに引きずられていく。
そのままAとBは押し入れの中に入っていった。
ゆっくりと襖が閉じられた。
しばらくしてビデオが終わった。
………なんだこれ。
「おーいB。ビデオ終わったぞ」…返事はない。
ゆっくりと押し入れの襖が開いていくのが見えた。
〜第66夜〜
「アイドルに送られたビデオ」
あるアイドルが握手会を開催した。
握手をする中、ファンからファンレターなどたくさんもらった。
握手会ではよくあることである。
しかし、今回は、ファンの中に一人、ビデオテープを渡してきた人がいた。
アイドルは気持ち悪いなぁと思いつつ、それでもファンでもあるんだから、
と受け取ることにした。
後日、その話を聞いた友達がみんなで見てみようという話しになった。
そのアイドルはあまり気乗りしなかったが、友達と一緒に観るのであれば、
ということで、その友人宅で観ることにした。
さっそく、友人宅でビデオテープをデッキにセットし再生した。
映っていたのは、小太りのいわゆるオタクっぽい男性であった。
その男性が普通の部屋のワンフロアで、アイドルが出している
CDの中の一曲に合わせて永遠と踊っているというものだった。
友人達は、
「キモ〜い」などと爆笑していた。
しかし、一人そのアイドルだけは青ざめていた。
「どうしたの!?」
と心配する友人達は聞きました。
すると、アイドルは画面を指差してこう言ったのです。
「これ…私の部屋…」
〜第67夜〜
「海の民宿」
高校生の時、部活の合宿で海の傍の民宿に泊まり込んだことがあった。
怖い顔をしたおっさんが経営する民宿で、安い割にボロボロで今にも倒れそうな木造だった。
夜、板張りの広い部屋で皆で雑魚寝していると、突然俺は揺り起こされた。
寝ぼけ眼でぼんやりと起こした奴を眺めると、そいつが
「トイレに行きたいけど、一人じゃ怖い」と俺に
囁くように言った。
俺は眠くてしょうがなかったが、そいつが「頼むよ お願いだよ」としつこく頼むので、
分かった分かったと言って布団から抜け出して、
皆を起こさない様に、そいつと抜き足差し足で部屋を出た。
トイレはどこにあるんだよ、と聞くと、海の家の外にあるんだが、
臭いし汚いし、何より明かりが無いから暗くて怖い、
とそいつは情けない声を出した。
俺はやれやれと思いながらそいつと廊下を抜け、海の家の玄関までやってきた。
そして玄関の戸に手を掛けようとした時、突然「何しよんかあぁ!!」と大声が響いた。
心臓から口が飛び出しそうになった俺が慌てて振り向くと、
民宿のおっさんが懐中電灯をこちらに向けながら憤怒の形相をしていた。
「いや、こいつがトイレに……」と言おうとすると、
おっさんが「出て行けぇ!!」と言いながら何かの粉をこちらにぶつけてきた。
塩だった。
俺は訳も分からず「はい、はい、すんません」と言いながら出て行こうと戸に手を掛けると、
「お前じゃない!!そいつだ!!」とおっさんは叫んだ。
俺が混乱しながら突っ立っていると、突然パチンと音がして辺りが明るくなった。
おっさんが電器を点けたのだった。
と、隣にいたはずの友人がいなくなっていた。
代わりに、俺とソイツが歩いて来た道筋に、濡れた足跡が点々とこちらまで続いていた。
「危なかったな。沈められるとこだったぞ」とおっさんは言った。
おっさんに「もう寝ろ」と言われ、全身鳥肌を立てながら部屋に戻ると、
俺以外の全員の部員が布団で寝ていた。
抜け出していたのは俺だけだった。
〜第68夜〜
「お化け屋敷」
夏休みということで、彼と遊園地のお化け屋敷に入った。
とにかく私は怖がりで、中が真っ暗なだけでもう…。
彼の腕を肘ごと抱え込んで、目もつぶって俯きながら歩いた。
彼に胸が肘に当って気持ちいい、とか言われたけど、
恐くて怒る気にもなれなかった。
彼は「こんなん作りもんじゃん!」って言うんだけど、
私はもうキャーキャー叫びまくり。
目をつぶってて何も見えないから彼がたまに
「うわっ」とか言うだけでビクビクしてしまった。
最後の方なんて「もう少しだから頑張れ」なんて彼に背中を
さすられながら半泣きで、何とか出口まで歩いた。
外に出て彼の腕を放すと、くっきりと私の手形が付いててどんだけだよ自分、
とあまりのへたれっぷりに笑ってしまった。
〜第69夜〜
「廃旅館のトイレ」
とある男性が友人と市外の山奥にある廃旅館にきもだめしに行った。
地元では有名な心霊スポットで壁には落書きがひどかったという。
その中にかなり怖いものがあった。
「シシシ死シシシシシ死シシシ死死ししししし
死シシ死し視ししし視しししししししし死ししし
シ死シシシシシ死し視シ死シシ視し死シシ死」
執拗なまでに部屋を埋め尽くす赤い塗料で書かれた文字。
天井にまで「死」
寒気がした。
そして…
その文字はまだ乾いていなかった。
〜第70夜〜
「母親からのメール」
この前、放課後に遊んでたら母親からメールが。
本文「やっほ〜。初メールだよ(笑)」
そういえば携帯を買うと言ってたな。全く良い年して(笑)とか使って。
仕方ないからアドレスを登録、メールの受信音も分かりやすいように
黒電話にしといた。
そして「良かったな」と返す。
すると、すぐに返事が。
「今ケータイで分からないところがある(汗)」
「家帰ったら教える」とだけ打って、家路に着いた。
家に着くと、案の定母が四苦八苦してた。
母「ああ、ちょうど良かったよ」
俺「一体何だよ」
母「携帯買ったのは良いんだけどねぇ。電源入れたら操作出来ないの。
せっかく買ったっていうのに」
何だ、ただのオートロックじゃないか。
俺はあきれながら初期ロック番号である「1234」を押した。
母「あ、操作が出来る!ありがとうねぇ。」
全く、これだから機械オンチは…
メールの文を打たすにも時間かかるな。こりゃ。
と、その時、俺の携帯が黒電話を流し出した。
ヒント
第62夜
見方によっては悲しい話ですね。
主人公の彼はおそらくもう…
第68夜
さすったのは誰…?
第70夜
最初に主人公にメールしたのは誰…?